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読書備忘録『素晴らしきビンテージ機材の世界』

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  先週発売されたばかりの本『素晴らしきビンテージ機材の世界』を昨日購入し、今日読了。DTMを趣味とする自分にとって、ビンテージ機材は憧れであり、それらのエミュレート・プラグインに日ごろからお世話になっている存在でもある。そんなビンテージ機材の世界に浸るのに、この本はうってつけと言える。

 

概要

 本書は、『Sound&Recording Magazine』に約6年間にわたり連載されたコーナーを編集・加筆して1冊の本にしたものである。一時代を築いた所謂「名機」と呼ばれる機材たちを、著者が歴史や音質といった様々な視点から解説する。この本を読めば、いまだにビンテージ機材を愛用するエンジニアたちが多い理由もおのずとわかるだろう。

基礎データ

・タイトル…素晴らしきビンテージ機材の世界 レコーディング・スタジオを彩る珠玉の名機たち

・著者…三好敏彦

・仕様…A5判/150頁

・出版社…リットーミュージック

・定価…2500円+税

・発売日…2020年11月26日

・ISBN…9784845635597

 

雑感

  この本読んで、ビンテージ機材への憧れがさらに強まった。手元に置いておくだけでも、マニアにとっては価値のあるものだと思う。カタログ的な使い方もいいかもしれない。しかし、悪い点もやや目立つ本であることは否めない。以下、本書の良い点と悪い点について述べる。

良い点

・エンジニアによる解説
著者の三好敏彦氏は、「HAL STUDIO」のオーナー兼エンジニア。紹介された機材のほとんどを実際に使用している。彼の経験に基づく解説は一読の価値あり。

・鮮やかなカラー写真
本書に掲載されている機材写真は、すべてカラー。この手の本にはモノクロ写真で機材を紹介するものも多いが、オールカラーのおかげで実際にどんなカラーリングなのかがわかりやすい。

・定番機材以外も紹介
誰もが知っているような機材の紹介だけに終始せず、日本ではあまり有名でない機材にも触れている。自分も知らなかった機材に出会える可能性あり。

・紹介される機材のタイプが幅広い
プリアンプやコンプ、EQは当然の事、リバーブなども取り上げる。広い範囲をカバーできるのは、著者がエンジニアだからこそだろう。

悪い点

・ハードカバー
これは好みの問題だが、このサイズだとハードカバーは読み辛いように思える。

・情報がマニアック
元の掲載雑誌からして、一般の人には馴染のないものである。マニアが読むことを前提としているため、何の解説もなしに専門用語が飛び出してくるので、少しビンテージ機材に興味がある程度では、なかなか読みにくいと思われる。

・定番機でも載っていないものも
「良い点」で定番以外も紹介していると述べたが、逆に定番だが載っていない機材も少なくない。歯がゆい思いするマニアもいるかもしれない。

・ややボリューム不足
基礎データにあるように、本書は160頁と本としては頁数の少ない部類。連載記事を基にしているからしょうがないのだが、もう少し加筆部分があると嬉しかった。

 

総評

 かゆいところに手が届かない感もうっすらするが、機材マニアであれば、基本的に買って損はしないと思われる。一方で、あまり知識のない人にとっては、ちんぷんかんぷんな記述も多い。実際に手を取ってみて、合うか合わないかを確認してからの購入を進める。