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読書備忘録(2019年8月10日)『The Canterville Gohst』

今回読んだ本は『The Canterville Ghost』のOXFORAD BOOKWORMS版。原作はオスカー・ワイルド。1987年に、彼が初めて発表した短編小説である。BOOKWORMS用にリライトされており、STAGE2に合わせて英文も易しく読みやすくなっている。総単語数6100words、語彙レベルは700head words。

 

 

あらすじ

アメリカ人ビジネスマン、オーティス氏は、カンタービレ卿から屋敷を購入し、一家で

移り住むことに決める。しかし、その屋敷は、300年もの間幽霊が住み着くいわくつきの屋敷であった。数々の怪奇現象が起こり、歴代の住人たちは病気がちになったり、果てには自殺者まで出てしまうほど。カンタービレ卿は、幽霊の存在について念押しするが、オーティス氏はどこ吹く風。モダンなアメリカ人である彼、そして彼の家族は全く幽霊を信じていなかった。一家が屋敷に引っ越してくると、早速幽霊は彼らを驚かそうとたくらむ。しかし、彼らは驚くどころか、幽霊にフレンドリーに接しようとするではないか。一番下の双子の兄弟にいたっては、幽霊に対していたずらを仕掛ける始末である。何度驚かそうと試みても、一家は一向に驚く気配はない。幽霊は疲弊してしまった。ある日、長女のヴァージニアは、初めて幽霊と1対1で話す機会に恵まれた。そこで彼女は、幽霊の正体、幽霊の過去の過ち、幽霊になった経緯を知る。成仏を願う幽霊は、ヴァージニアに助けを請う。彼女はそれに応え、無事幽霊は永遠の、平和な眠りについたのだった。

 

雑感

表紙だけ見ると、ガチガチのホラーのように錯覚するが、実際は幽霊とアメリカ人一家の交流を描いたファンタジーである。STAGE2であり、原作も短編であるので、あっと言う間に読み終えてしまうが、流石はオスカー・ワイルド、十分な読みごたえだ。分速100単語のスピードで読めば、1時間程度で読み終える。語彙のレベルに関して言えば、中学3年生レベルだろうか。高校生以上ならば、辞書なしで簡単に読めるだろう。

 

屋敷に住み着くゴーストは、人を驚かすことが自分の存在理由である、と信じていた。しかし、オーティス家の面々は、恐怖を抱くことは決してなかった。これは、彼が住み着いてからの300年間で、初めてのことだった。自分の存在意義を揺るがしかねない重大な事件であって、読者からすれば笑いのタネだが、幽霊にしてみれば、笑い事ではない。まさに「poor ghost」だ。しかし、この幽霊が「poor」理由は、もう一つ別にあったというところがこの物語のミソである。

 

偶然出会ったオーティス家長女、ヴァージニアが、「poor」な幽霊を救うカギを握っていた。そのカギとは愛である。幽霊は彼女に対してこんな言葉を投げかける。

You can open  the door to Death for me, for Love is always with you, and Love is stronger than Death is.(p.31) 

 愛は死より強し―彼女は愛を持っているので、死に引き込まれことはない、ゆえに、幽霊の成仏の手助けができたのである。コメディタッチの前半からうってかわって、後半はシリアスでロマンティックなストーリーが展開される。このような話の転換は上手いと思う。最終的に幽霊は救われ、屋敷では二度と怪奇現象は起きなくなる―人間と幽霊双方に良い結果となった。オチとしてはいい塩梅ではなかろうか。「Love is stronger than Death is」という言葉は、最後にももう一度出てくる。この物語の主題は、そこにあるのだろう。