LINEにまつわる騒動―古いスマホを使い続けるリスク
はじめに
スマホの普及とともに、LINEも急速に広まった。ユーザーの年齢層も様々であり、オールドタイプな我が両親でさえ、ガラケーからスマホに乗り換えたことをきっかけに、LINEの使用を開始したほどだ。LINEは現代社会を代表するコミュニケーションツールであり、多くの人々にとってなくてはならない存在である。それゆえ、LINEが使えない状況になると、少し困ったことになる。
本文章は、つい最近筆者が体験した、LINEにまつわる騒動の顛末を記したものである。ドラマティックな物語があったわけでも、秀逸なオチがあるわけでもないが、当事者としては非常に肝の冷えた出来事だったので、ここに綴る。
騒動の発端
落とし物というものは、日々数えきれないほど発生している。発見場所を大学構内に限定しても、おびただしい数の落とし物が、学生課に届けられていることだろう。
落とし物をすることは、誰でも経験しうるものだ。問題は、何を落としたかに尽きる。例えば筆記用具や手袋程度では―それに特別な意味がある場合は別として―、また買い直せば済む話なので、さほど問題ではない。これが所謂貴重品だったらどうか。例えば財布だったら、現金はもちろんのこと、カード類も入っているだろう。自分が使えなくなるだけでなく、悪用されるリスクもある。貴重品を落としたら非常にマズい。
スマホも貴重品である。端末には他人のも含め、多くの個人情報が含まれている。落とした時のリスクは計り知れない。だから、普通なら管理を徹底するはずである。今回の出来事は、そんな落としてはいけないスマホを、筆者が落としてしまったことがきっかけとなった。
スマホ紛失未遂と初期化
具体的な日時や場所は控えるが、筆者は大学内でスマホを落とした。落としたのに気付いてから約1時間後、講義を少しの間抜け出し、落とし物として届いていないか、落とし物を預かっている場所に問い合わせた。しかし、届いていないとの返答が。盗難にあったことも考慮し、とりあえずその日は大学内の捜索は実施せず、帰宅しPCから利用の一時中断の手続きを行った。盗まれていた場合、悪用される可能性が高いからである。ここまではいたって普通の対応である。
後日、再び落とし物について問い合わせたところ、その後届いていたことがわかった
。充電が切れていたものの、特に悪用された形跡はなかった。とりあえず一安心し、別端末から利用再開の手続きを完了させた。あとは端末にパスワードを入れるだけである。
しかし、パスワード入力で問題発生。普段端末の画面をロックしないので、パスワードを入れる機会がほとんどない。それゆえ、端末のパスワードを覚えていなかった。初期設定のままかと思いきや、どうやら数年前に替えたらしい。メモもしていないので、スマホを見つけたにも拘わらず使えない状態に陥った。心当たりのある番号は全て入力したが、どれも該当せず。もはや最終手段である端末初期化を施すほかなかった。
スマホを初期化しても問題ないのか
端末初期化をすると、スマホ内部に保存されているデータは全て消失する。例えば、電話帳や写真である。LINEのような、最初から端末にインストールされていないアプリ
も、アンインストールされる。
莫大なデータを失う端末初期化であるが、そんな簡単に実行しても良いものなのだろうか？筆者の場合は、実際のところ、端末初期化をしてもさほど問題はなかった。 例えば、重要な写真はSDカードの方に保存していて難を逃れ、アプリに関しても、スマホにインストールしてあったのは、消えても問題のないものだけだった。電話帳のデータもすべて消えたが、これも問題はない。
前述したように、端末初期化で消えるのは端末内部に保存してあるデータである。メールアドレスやメールの受信設定、電話番号、料金プラン等、端末内部で完結しないデータは、初期化で消失しない。
LINEのようなアカウント制のアプリも、内部データが消えてもアカウントは消失しない。アカウント登録する際、メールアドレスや電話番号を使用すると思うが、どちらも初期化の影響を受けないものである。だから、アプリがアンインストールされようとも、再インストールすれば依然と同じアカウントで再び始められる。
では次に、電話帳のデータが全て消えても問題なかった理由について述べたいと思う。普通、電話帳に登録してあるのは、個人の名前と電話番号、メールアドレスだ。これが消えると言うことは、覚えていないかぎり自発的に連絡を取れなくなることを意味する。しかし最近は、親しい者同士では、LINEでやり取りすることがスタンダードになっていて、電話をしたりメールを送ったりする機会がほとんどない。電話をかけたりメールを送ったりすることができなくなっても、LINEがあれば大して困らないのである。そして、LINEは端末初期化の影響を受けないため、連絡先が消えることはない。つまり、LINEという連絡手段が残されているので電話帳のデータが消えても問題ないのである。
LINEにログインできない
初期化によってロックを突破。次いでLINEを再インストールしようとGoogle Playにアクセスするも、LINEが検索しても出てこない。その理由は、筆者のスマホ搭載のAndroidのバージョンが古く、LINEの最新版に対応していないからだった。出鼻をくじかれた形になったが、幸い古いバージョンはネットに転がっているので、そちらを使えばどうにかなるはず。そう思いスマホのAndroidに対応しているバージョンを再インストールするも、またしても問題発生。その問題は以下の2つである。
・LINEのパスワードを忘れた
・バージョン9.11以下のLINEでは、新規登録・ログインはできない
まずは後者について。バージョン9.11より新しいバージョンは、Android4.4以上でなければインストールすることができない。すなわち、筆者のように、Android4.4未満の端末を使っていると、LINEに登録することもログインすることもできないのである。しかし、初期化する前は、9.11未満でもLINEは使えていた。これは、スマホの場合常時LINEにログイン状態にあるからで、ログアウトしなければ、9.11未満のバージョンでも引き続き使えるのである。一度でもログアウトすると、それ以降はログインできなくなる。筆者の場合、初期化の際にアンインストールしたことで、ログアウトしてしまった。だから、筆者のAndroid4.1.2の端末では、二度とLINEはできなくなってしまったのである。Androidのバージョンアップすればいいと思うかもしれないが、端末が対応している一番新しいバージョンが4.1.2なので、どうしようもない。
届かない再設定メール
続いてパスワード忘却問題に関して。本来ならこれはさほど問題になるわけではない。なぜなら、登録メールアドレスさえ覚えていれば、パスワードの再設定メールを送れるからである。パスワード再設定メールを送るだけなら、古いバージョンでも行えるのではないかと思い、再設定メールの送信を試みた。すると、送信に成功した旨の表示が。ようやくLINEの利用を再開できると思いきや、いつまで経ってもメールが届かない。フィルターに引っかかっているのかと考え、メールの受信設定をすべてデフォルトに戻した。しかし何度送信しても、届く気配がない。挙句、「これ以上再設定メールを送ることができません」というメッセージが表示された。LINEを再インストールしたり、バージョンを変えたりしても無駄であった。やべえよやべえよ…。
Androidエミュレータの導入
しかし、諦めるのはまだ早い。バージョンが古いため、再設定メールが送れなくなっている可能性はある。そして、端末を変えれば、同じメールアドレスだとしても、再設定メールを送れるかもしれない。そう思い、筆者は次なる一手を打った。要はAndroid4.4以上の端末で、LINEをインストールすればいい。別のスマホもタブレットも
持っていない筆者は、AndroidのエミュレータをPCにインストールすることにした。そのエミュレータは、「NoxPlayer6」である。Androidのエミュレータは本来、PC上でスマホゲームをプレイしたり、アプリ開発の際の挙動確認に使ったりするものだ。スマホの環境を疑似的に再現するものであるから、LINEも当然エミュレータ上で動く。こうして、PC上に最新版LINEを用意することができた。
最新版のLINEは、初回ログインの際は電話番号を入力する必要がある。電話番号を入力すると、端末にSMSが届き、それに記載された認証番号を入力する。認証番号を入力すると、電話番号が紐付けられたアカウントがあれば、そのアカウントを現在の端末に引き継くことができる。引き継ぎに必要なのは、登録されたメールアドレスとパスワードだ。ネット上の記事では、パスワードを忘れていると引き継ぎできないと書いてある場合があるが、この時点でパスワードがわからなくても、再設定メールは送ることができる。すなわち、引き継ぎの際は電話番号とメールアドレスさえあれば十分なのである。
エミュレータ上のLINEにスマホの番号を入力したところ、ちゃんとスマホにSMSが届き、認証番号を入力することができた。電話番号とアカウントを紐付けしていたため、アカウントがちゃんと生きていることも確認できた。もう少しで長かった闘いも終わる。そう思い再設定メールを送信。送れたとの表示も出て、あとはパスワードを再設定するだけ。しかし、闘いはまだ終わりではなかった。またしても再設定メールが届かなかったのである。原因はわからないが、認証番号送信も問題なかったので、ネットワークには通じているはずである。もはや万策尽き、絶望しかなかった。
ダメ元のiPod Touch
画期的な作戦だと思ったエミュレータ導入も、なす術もなく崩れ去った。ここまでやっても無理なら、新規登録するしかないのか…と諦めかけていた。一応LINEをインストールできる端末はまだあったので、悪あがきで試してみることにした。その端末とは、iPod Touch（第6世代）である。LINEをインストールし、端末番号を入力。SMSはスマホにちゃんと届き、第1関門は突破。そして第2関門、再設定メールの送信である。送信完了の表示が現れ、ここまではこれまでと同じである。後はスマホにちゃんと届くかであった。数秒後、スマホが振動した。ついに再設定メールが届いたのだ。絶望の中に1ひとつだけ希望が残っていたのである。
無事、パスワードの再設定も完了し、LINEアカウントにログインすることができた。長く苦しい闘いが、今度こそ終わったのである。iPod Touchにアカウントを引き継いだことになっているので、スマホではもう同じアカウントは使えない。
おわりに
今になって思えば、エミュレータであれこれする前にiPod Touchを先に試すべきであった。普通に考えて、エミュよりも実機の方が確実なのだから。冷静さを失っていたと言うほかない。
今回の件で、古すぎる端末を使い続けるのも、様々なデメリットを抱えることを実感。お知らせを読んでいなかったのが原因だが、まさか古すぎるとログインすらできなくなるとは思ってもいなかった。スマホをLINEやネットサーフィン以外ほとんど使わないので、そのあたりは無頓着になっていた。反省しなければならない。
以上が、スマホを落としたことから始まった、LINEにログインできなくなったしょうもない騒動の全てである。
